Q&A
Q1
ウパシタは透析で除去されますか?
透析除去率はどれくらいですか?
透析患者における主な排泄経路は透析による除去であり、ウパシタは1回の透析で78.40~100%が除去されました。
根拠データ
第Ⅰ/Ⅱ相試験(単回投与、維持血液透析下のSHPT患者)
投与66時間後に血液透析を行った結果、透析直後(70h)の血漿中未変化体濃度は
透析直前(66h)の値より78.40〜100%低下しました(図1, 表1)1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者29例(4又は5例/群)
- 方法
-
ウパシカルセトナトリウム25、50、100、200、400、600及び800μgを透析後2時間以上4時間以内にゆっくりと60秒以内で静脈内に単回投与し、血漿中薬物濃度推移及び次回血液透析時(66h後)における透析除去率*を検討した。なお、用量別に7stepに分け、step毎に安全性を確認しながら逐次増量した。
- 評価項目
-
未変化体の血漿中濃度及び透析除去率
- 解析方法
-
●血漿中濃度について、各投与群における時点毎の平均値及び標準偏差を算出した。また、各投与群の片対数スケールの推移図を作成した。
●透析除去率について、各投与群における平均値及び標準偏差を算出した。
*透析除去率(%)=(開始前血漿中濃度-終了後血漿中濃度)/開始前血漿中濃度×100
透析除去率について、透析完了前に血漿中濃度が検出され、透析終了後に血漿中濃度が定量下限未満であった場合は0ng/mLとして算出した。(未変化体では、25μg群で4例、50μg群で3例、100μg群で1例、800μg群で1例が該当)
6. 用法及び用量
通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
Q2 ウパシタの透析除去率に影響するデータについて教えてください。
一般に、薬物の透析性には、尿中未変化体排泄率、タンパク結合率、
分布容積、分子量、水溶性などが関係しています8)9)10)11)12)。
ウパシタは、
- ①血漿中で90%以上が未変化体として存在し、主に腎排泄です(健康成人男性)。
- ②ヒト血漿タンパク結合率は約45%で、非共有結合です(in vitro)。
- ③分布容積は11700~17700mLです(Q4&A4参照)。
- ④分子量は373.75(脱水物として)です。
- ⑤水溶性です[分配係数 logP:<ー2.7(1-オクタノール/水系)]。
根拠データ
- ①維持血液透析下のSHPT患者(4又は5例/群)に対して、ウパシタ25、50、100、200、400、600及び800μgを単回静脈内投与したとき、血漿中には総曝露量の90%以上が未変化体として存在しました1)。M1の血漿中濃度はいずれの用量においても定量下限未満であり、M2は総曝露量の0.8%以下、M3は総曝露量の5.8%以下でした1)。
- ①健康成人男性(6例/群)にウパシカルセトナトリウム10、100、1000及び2500μgを単回静脈内投与して投与後48時間までのウパシカルセトナトリウムの尿中排泄率を検討しました。投与後48時間までの未変化体の尿中排泄率は、10μg群で78.9±3.1%、100μg群で83.2±1.7%、1000μg群で95.0±18.6%、2500μg群で88.4±11.4%でした。代謝物は1000μg群及び2500μg群でM3のみがわずかに検出されました3)。
- ②タンパク結合率は、ヒト(健康成人男性)の血漿並びにヒト血漿タンパク画分(ヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖タンパク)を用いて、平衡透析法にて評価しました。その結果、ヒト血漿タンパク結合率は、0.01~10μg/mLの範囲において44.2~45.6%でした。また、ヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖タンパクに対する結合率は、39.6〜41.1%及び0.9〜1.6%でした(in vitro)4)。
- ②[14C]ウパシカルセトナトリウムを添加したヒト血漿における有機溶媒抽出率を検討したところ、上清中への放射能の抽出率は96.2~97.3%でした5)。
- ⑤ほとんど混合しない1-オクタノールと水の溶媒からなる二相に溶解したウパシカルセトナトリウムの各層における平衡濃度の比から求めたlogPは、−2.7未満でした6)。
参考
- 一般に、薬物の血清タンパク結合は可逆的であることが知られています7)。
- 一般に、薬物の透析からの除去性には、薬物の尿中未変化体排泄率、タンパク結合率、分布容積、分子量、水溶性などが関係しています。分子量については、透析膜の膜孔径が大きくなり5千ダルトン程度まで除去可能となりましたが、分子量が小さくてもタンパク結合率が高いと除去されません。タンパク結合率、分布容積が重要な因子です(タンパク結合率が小さいほど除去率は上がる、分布容積が大きいと組織移行性が高くなるため除去率は下がる)8)9)10)11)。
- また、尿中未変化体排泄率が低い肝代謝型薬物、油水分配係数の大きい脂溶性薬物は透析性を低下させる要因です12)。
6. 用法及び用量
通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
- 2)社内資料:薬物動態試験(代謝)(承認時評価資料)
- 3)社内資料:第Ⅰ相試験-健康成人男性を対象とした単回投与試験-(承認時評価資料)
- 4)社内資料:血漿タンパク結合(in vitro)(承認時評価資料)
- 5)社内資料:ヒト血漿における放射能抽出率(in vitro)(承認時評価資料)
- 6)社内資料:有効成分の物理化学的性質(分配係数)(承認時評価資料)
- 7)小田切優樹:YAKUGAKU ZASSHI. 2009: 129(4): 413-425
- 8)金井威:腎臓内科・泌尿器科. 2019: 10(4): 385-390
- 9)平田純生:臨牀透析. 2019: 35(7): 734-743
- 10)浦田元樹:透析スタッフ. 2015: 3(1): 13-19
- 11)鶴岡秀一:臨床薬理. 2015: 46(2): 93-98
- 12)平田純生、他:透析会誌. 2004: 37 (10): 1893-1900
Q3
ウパシタの未変化体の割合はどれくらいですか?
タンパク結合率について教えてください。
ウパシタは、血漿中では90%以上が未変化体でした。
また、ヒト血漿タンパク結合率(in vitro)は、約45%でした。
根拠データ
- 維持血液透析下のSHPT患者(4又は5例/群)に対して、ウパシカルセトナトリウム25、50、100、200、400、600及び800μgを単回静脈内投与したとき、血漿中には総曝露量の90%以上が未変化体として存在しました1)。
- タンパク結合率(in vitro)は、ヒト(健康成人男性)の血漿並びにヒト血漿タンパク画分(ヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖タンパク)を用いて、平衡透析法にて評価しました。その結果、ヒト血漿タンパク結合率は、0.01~10μg/mLの範囲において44.2~45.6%でした。また、ヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖タンパクに対する結合率は、それぞれ39.6〜41.1%及び0.9〜1.6%でした4)。
6. 用法及び用量
通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
- 4)社内資料:血漿タンパク結合(in vitro)(承認時評価資料)
Q4 ウパシタの分布容積を教えてください。
国内第Ⅰ相試験において、健康成人男性にウパシタ10、100、1000及び
2500μgを単回静脈内投与した際の分布容積は8840〜12600mLでした。
また、維持血液透析下のSHPT患者にウパシタ25、50、100、200、400、600及び
800μgを単回投与した際の分布容積は11700~17700mLでした。
根拠データ
第Ⅰ相試験(単回投与、日本人健康成人男子)
健康成人男性にウパシカルセトナトリウムを単回静脈内投与した後のVdss(定常状態における見かけの分布容積)を表2に示しました3)。
- 対象
-
日本人健康成人男子24例(6例/群)
- 方法
-
ウパシカルセトナトリウム10、100、1000及び2500μgを静脈内に単回投与し、薬物動態パラメータ(Vdss:定常状態における見かけの分布容積)を検討した。
- 評価項目
-
薬物動態パラメータ(Vdss:定常状態における見かけの分布容積)
第Ⅰ/Ⅱ相試験(単回投与、維持血液透析下のSHPT患者)
維持血液透析下のSHPT患者にウパシカルセトナトリウムを静脈内に単回投与した後のVdss(定常状態における見かけの分布容積)を表3に示しました1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者29例(4又は5例/群)
- 方法
-
ウパシカルセトナトリウム25、50、100、200、400、600及び800μgを透析後2時間以上4時間以内にゆっくりと60秒以内で静脈内に単回投与し、薬物動態パラメータ(Vdss:定常状態における見かけの分布容積)を検討した。なお、用量別に7stepに分け、step毎に安全性を確認しながら逐次増量した。
- 評価項目
-
薬物動態パラメータ(Vdss:定常状態における見かけの分布容積)
6. 用法及び用量
通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
- 3)社内資料:第Ⅰ相試験-健康成人男性を対象とした単回投与試験-(承認時評価資料)
Q5
ウパシタは反復投与によって蓄積しませんか?
どれくらいで定常状態に到達しますか?
維持血液透析下のSHPT患者にウパシタ50、100、200μgを3週間、
反復投与(週3回、22日間、合計9回の投与)した結果、投与3日目以降、
トラフ濃度は上昇せず、1回目の投与で定常状態に達していたことが示されました。
根拠データ
第Ⅰ/Ⅱ相試験(反復投与、維持血液透析下のSHPT患者)
反復静脈内投与時の血漿中未変化体濃度の推移を図3に示しました。3週間の反復投与において、血漿中には主に未変化体として存在し、反復投与によって透析前の血漿中トラフ濃度は上昇しないことが示されました(表4)1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者26例(8又は10例/群)
- 方法
-
ウパシカルセトナトリウム50、100及び200μgを週3回、22日間(計9回投与)、血液透析終了直前に透析回路静脈側に注入(静注)し、血漿中薬物濃度推移を検討した。
- 評価項目
-
未変化体の血漿中濃度
- 解析方法
-
血漿中濃度の3日目以降の透析前濃度について、各投与群における時点毎の平均値及び標準偏差を算出した。また、各投与群の片対数スケールのプロットを作成した。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
Q6-1 ウパシタ投与後の血清iPTHの変化について教えてください。
単回投与試験において血清iPTH濃度は、ウパシタ25μg群では
投与前が394.8pg/mL、投与10分後が258.3pg/mLでした(平均値)。
50μg群では投与前が486.0pg/mL、投与10分後が282.5pg/mLでした(平均値)。
反復投与試験において、血清iPTH濃度は図4のように推移しました。
根拠データ
第Ⅰ/Ⅱ相試験(単回投与、維持血液透析下のSHPT患者)
投与前と投与後10分の血清iPTH濃度を表5に示しました。併せて投与後10分の血中未変化体濃度も併記しました1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者31例(4又は15例/群)
- 方法
-
プラセボ、ウパシカルセトナトリウム25、50、100及び200μgを透析後2時間以上4時間以内にゆっくりと60秒以内で静脈内に単回投与し、血清iPTH濃度について検討した。
第Ⅰ/Ⅱ相試験(反復投与、維持血液透析下のSHPT患者)
反復投与時の投与前に対する投与22日目の透析前血清iPTH濃度の変化率は、プラセボ群で17.24±21.23%、ウパシカルセトナトリウム50μg群で−7.64±15.04%、100μg群で−24.78±20.41%、200μg群で−36.23±30.98%でした(図4)1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者37例(8,10又は11例/群)
- 方法
-
プラセボ、ウパシカルセトナトリウム50、100及び200μgを週3回、22日間(計9回投与)、血液透析終了直前に透析回路静脈側に注入(静注)し、薬力学的評価について検討した。なお、用量別に3stepに分け、step毎に安全性を確認しながら逐次増量した。
- 評価項目
-
血清iPTH濃度の1日目投与前からの変化率
- 解析方法
-
血清iPTH濃度の1日目投与前からの変化率について、各投与群の線形スケールのプロットを作成した。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
Q6-2 ウパシタ投与後の血清Caの変化について教えてください。
根拠データ
第Ⅰ/Ⅱ相試験(単回投与、維持血液透析下のSHPT患者)
投与前と投与後6、18時間の血清補正Ca濃度を表6に示しました1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者31例(4又は15例/群)
- 方法
-
プラセボ、ウパシカルセトナトリウム25、50、100及び200μgを透析後2時間以上4時間以内にゆっくりと60秒以内で静脈内に単回投与し、血清補正Ca濃度について検討した。
第Ⅰ/Ⅱ相試験(反復投与、維持血液透析下のSHPT患者)
反復投与時の投与前に対する投与22日目の透析前血清補正Ca濃度の変化率は、プラセボ群で−1.20±2.77%、ウパシカルセトナトリウム50μg群で−9.51±5.70%、100μg群で−11.87±3.16%、200μg群で−17.14±5.33%でした(図5)1)。
- 対象
-
維持血液透析下のSHPT患者37例(8,10又は11例/群)
- 方法
-
プラセボ、ウパシカルセトナトリウム50、100及び200μgを週3回、22日間(計9回投与)、血液透析終了直前に透析回路静脈側に注入(静注)し、薬力学的評価について検討した。なお、用量別に3stepに分け、step毎に安全性を確認しながら逐次増量した。
- 評価項目
-
血清補正Ca濃度の1日目投与前からの変化率
- 解析方法
-
血清補正Ca濃度の1日目投与前からの変化率について、各投与群の線形スケールのプロットを作成した。
6. 用法及び用量
通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
Q7 ウパシタは肝機能障害患者さんに対する投与はできますか?
添付文書上、肝機能障害に対し、投与制限や関連する使用上の注意等の記載はありません。
ウパシタは肝臓での代謝を受けにくく、透析患者における主な排泄経路は透析による除去であるため、
肝機能障害患者さんにおいて未変化体の血中濃度が上がる可能性は低いと考えられます。
根拠データ
ウパシカルセトナトリウムの主な代謝物は、アセチル抱合体(M1)、グルタミン酸抱合体(M2)、酸化的脱アミノ化体(M3)と推定されました。M1の血漿中濃度は、いずれの用量においても定量下限未満でした。M2の血漿中濃度は総曝露量の0.8%以下でした。M3は総曝露量の5.8%以下でした(図6)1)。
代謝物には、未変化体が有する活性はありません。代謝物のヒトCaSR(カルシウム感知受容体)に対する作用を表7にまとめました13)。
- 1)社内資料:第Ⅰ/Ⅱ相試験-維持血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした単回及び反復静脈内投与試験-(承認時評価資料)
- 2)社内資料:薬物動態試験(代謝)(承認時評価資料)
- 13)社内資料:ヒトCaSRに対する作用(承認時評価資料)